銀魂小説
冷雫  (二

「ついたぞ。」

「・・・転海屋?聞かない名っすね・・・」


そんなことを言っているうちに高杉はどんどん進んで行く

「蔵場に通せ」

門人に命令口調で主を呼ばせた

「何者だ!」

高杉は答えようとしない

「貴様!!」

手に持っていた槍をかざした瞬間、屋敷の方から声がした

「やめんか。この方は私の客人だ。高杉様、とんだご無礼を。ささ、奥の方へ」

「蔵場様!」

背丈は高杉より少し低いといったところか、輪郭は角張っていて眉は太め。厳しい顔つきであまり笑顔をこぼさない。だがどういうわけか、一見優しそうに見えもする。


「本日はわざわざお越しいただき、お疲れ様でございます。そのお嬢さんは?」

「あっこれは失礼しました。鬼兵隊、来島また子です」

「私は貿易業を営んでいます。転海屋、蔵場当馬です。なんと、鬼兵隊にはおなごもいてましたか」

「こいつは、別だ」

高杉がボソッっと言葉を放つ

その言葉にまた子の顔はにやける

高杉は得に色恋のつもりでまた子を傍においているわけではないが、それなりに訳はあるらしい。その話はまた機会があれば是非したいものだ。


「っゴホッ!ゴホ!」

襖の奥からか細い咳払いが聞こえてきた

ふっと高杉が襖の隙間に流し眼を向けると、栗色の髪がわずかに見えた

何故か目が離せず、その髪から徐々に下へ目線を移していくと異常なほどに白い肌が目に入った

横顔を静かに眺めていると女が視線に気づく

高杉と目が合った彼女は弱々しく柔らかい笑顔を向けた


トクン・・・


一瞬、高杉の呼吸が止まる



「高杉様?」

「晋助様?どうしたんっすか?」

また子が高杉の肩に触れる

「!いや。なんでも」


すっと彼女から目線を戻す

「ん?あぁ。ご紹介が遅れました。彼女はミツバ。私の嫁です。」

すっと襖が開き、よろよろっと姿を現した

「はじめまして。沖田ミツバ改め蔵場ミツバです」

「綺麗な方っすねぇ〜!」

高杉はミツバの方は向かず声だけを聞いていた

「今日はこれで失礼する。行くぞまた子」

「あっはい!ぞうもお邪魔しました」

「玄関までお送りいたしますよ」

蔵場がすっと席を立つ。

「いい。その女は病気なのだろう?傍にいろ」

高杉の口から思いがけない言葉がでた



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