銀魂小説
幼い記憶  (神威 神楽)

幼い記憶 


たぶんあれはまだ私が三歳にも満たない頃だったと思う

「兄ちゃん?」
「ん?」
「パピー、いつ帰ってくるアル?」
「・・・うん」
「兄ちゃん?」
「・・・ん?」
「マミー、どこ行っちゃったアル?」
「・・・」
私たち兄妹が、おそらく毎日交わしたであろうお決まりの会話


パピー、いつ帰ってくるアル?

知らねぇよ、あんな奴なんか・・・
宇宙一かなんか知らねぇけど幼い俺達兄妹置き去りにして
どうしろってんだ・・・
強さが一番?
強さこそが名誉?


それが、夜兎の宿命?


マミー、どこ行っちゃったアル?

・・・・・・。帰ってこねぇよ・・・。

母親は俺が、俺が・・・・・・。





「ただいまヨ〜」

幼い神楽の声に、まだ声変わりの気配もない高めの男の声がする

「どこ行ってたんだぁ?」

作り笑いなんて知らないといったような、屈託のない笑顔で妹に問う

「お外でねぇ、おだんごつくってたアル!」

泥だらけの手を見せて声を上げて笑う

「神楽はお料理が得意だもんな。お兄ちゃん助かるよ」

「うん!かぐらね、おおきくなったらね、兄ちゃんのおよめさんになるんだよ」

「楽しみだなぁ」

母親の居ない二人の食事は妹の神楽が担当している

「そういえばさっきゆうびんのおじさんにおてがみもらったアルよ」

「手紙?」

神楽は汚れないようにはしっこをつまむようにして神威に手紙を手渡した

「俺宛て?」
ひとこと呟いて送り主の名を探した

「無名・・・」
神威は顔を曇らして手紙の封を切った

「・・・・・・」

「兄ちゃん誰ネ?」

「・・・今日の夕方、父さんが帰って来るって!」

妹にすればうれしい知らせだと思い、あえて楽しそうな声色で言った

案の定神楽は満面の笑みで部屋の中を駆け回っていた

「わぁーい!!!パピーに会えるヨ!帰ってくるアルヨ!!」


喜ぶ神楽とは逆に神威の表情は暗く、憎しみに満ちているようにもみえた


午後、庭の花に水をやる神楽の背後に大きな影ができた

幼いとはいえ夜兎の娘、さっと身体の向きをかえ小さく構えをとった
「・・・!パピー!!」

逆光に照らされた大きな影が神楽をすっと抱き上げた
「ただいま神楽ちゃん」
頭を優しく撫でて頬ずりをする大男

「パピー会いたかったアル!」
「パパもだよぉ〜」
娘にメロメロの星海坊主は、とても宇宙一の戦士とは思えなかった

「お兄ちゃんは?」
「中に居るアルよ」
神楽が家を指さして答えた

星海坊主は神楽を抱えたまま久しぶりの我が家へ入って行った

「神威ー帰ったぞー」
部屋の奥から俯いた神威が姿を見せた


「臭ぇ・・・。」

「ん?パパ汗臭かったかな?」
わざとおどけて星海坊主は答えた

「血生臭ぇ手で神楽に触れんじゃねぇよ!!!」

神威は今まで神楽が見たこともないような顔をして怒鳴った

星海坊主は何も言わず神楽を降ろした

「にい・・ちゃん?」
恐る恐る声をかける神楽に
少し表情を柔めて冷静さを取り戻す神威






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