のぁの小説。注意:銀魂無関係
私 前編

自分の余命を知った人間は、これまで目の横で見ていた道端の花や、風によってまとまったりばらけたりと形を変えてゆく雲だったりとかを、美しい。と思うのだ

他人に優しくなれるし、嫌いだったものも口にしてみたりした
賞味期限間近の物を激しく哀しくも思った

私の期限もあと少しなのだと


若い両親と、二つ上の兄にむかえられ私はこの家族の一員となった四月。沢山の愛情と沢山の期待の中私は育てられた

ゆとり世代と言われる私たち平成の子供
甘やかされ、世間知らずと馬鹿にされることは多々あった

何より腹立たしかったのはまだ若かった両親への好奇の目だ
私は若い両親が嬉しかったのを鮮明に覚えている、今でも自慢の両親なのだ

昭和の人間に比べれば確かに酷く甘い生活をしてきたのかもしれない
同年代の仲間たちは派手な格好で学校に行く
私もその中に紛れてきた
だが社会に出れば別だ

介護職についた私は化粧で着飾ることをやめ、相応の格好をした
それでも、今時の子。と年配の方からは嫌がられたりもしたのだ

19になった年に一人の男性と出会う
なんとも言えないが、ビビっときたのだ。
あぁ私 この人と結婚するんだ

出会い頭にそんなことを思った

それからほどなくして私たちは付き合い始めることとなった

すぐに一緒に住むようになり、二ヶ月後には妊娠が発覚した


職場ではおめでとうの裏の声が痛いほど聞こえた

若いのに

やっぱり最近の子は



産婦人科へ胎児を見てもらいに行った。

どうするの?

第一声がコレである

どうって?

産むの?親は知ってるの?旦那さんは居るの?

アンタニ関係ナイ

職場でのこともあり私は子供みたいにすねた態度をとった

だけど小さな小さな黒い影をモニターで確認したときから、周りの声が苦にならなくなった。

なんて可愛いんだろう

誰になんと言われようと関係ない

私はこの子の親なんだ、人の親になるんだ


同じ頃、職場の同僚も妊娠したと言っていた
可愛いよね、楽しみだよねと話すと、その子は堕ろすのだと言った


私三回目なんよねー


本気で他人にここまで腹立たしいと思ったことはない

別に長年連れ添った友人でもない

私はその子に何も言わなかった

産める命なのに

この世の中を生きられる命なのに

身勝手に灯火を消すのだ

いつか結婚して赤ちゃんをむかえたときに後悔するのか、罪悪感のかけらさえも持たずに産むのか。
私には解らない、解りたくもない。そして私は彼女とは関わらなくなった


八月、互いの親に挨拶に行った

これからどうするん

夫の親に言われた

結婚して赤ちゃんをむかえると言いはなってくれた

少しの沈黙があり、私たちは認められた

正直緊張し過ぎてあまり覚えてないのだが


そして私の両親のところへ行った

夫はスーツの一番上のボタンを窮屈に止めあげて正座をし汗をダラダラとながしながら父に結婚したいと言った

父は意外にもあっさり、よかった。と言うのだ

よかった?

そうだよ、よかった。だって子供ができた、堕ろさせて、なんて無責任な事を言われたら殴ってた

お前を嫁に欲しいと言ってくれた、怒る必要なんてない


ただな、ひとつ

と父。

俺が殴るときは一つ、娘や産まれて来る子を不幸にしたときだ


涙が込み上げたね

父をさらに好きになった

それで話は終わり。そっからはワイワイと食事を楽しんだ



春、長男が産まれた

43時間に及ぶ陣痛の中、母がずっと痛む腰を撫で、励まし続けてくれた
どれだけ助かったことか
もし娘が産まれたら出産の際には必ずそうすると心に決めたぐらいだ

可愛い、可愛い息子
毎日見ても、可愛いのだ

アルバムにはとても整理しきれないほどの膨大な数の写真を来る日も来る日も撮ったものだ
まだ20歳になりたての私に世間の目は冷たかったがそんなの気にもならない
職場にも堂々と見せに行った

どこにでも、私の子だと言ってやった

私は幸せだった
ただただ、幸せだった


なのに神という者は時に人間に冷たいのだ

この幸せから私を離脱させた

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