のぁの小説。注意:銀魂無関係
私 後編

乳がん、それもすでに全身に移転しているのだと聞かされた

じきに脳にまで移転し、体が動かなくなるそうだ

もう、愛おしい我が子を抱く事が出来ないのだ

若さとは時に恐ろしい

ガンを瞬く間に進行させていった


そして私は余命を宣告されたのだ


生きられて半年、短くて一ヶ月


なんと酷なのだろう


私が何をしたというのか


どうして私を選んだのか


どうして私なのだろうか


子供のランドセル姿も見られないどころか立ち上がる姿すらも見られないかもしれない

下手すれば話す言葉さえ聞けないままかもしれないのだ


私は恐怖した。

自分の余命を知った人間は、これまで目の横で見ていた道端の花や、風によってまとまったりばらけたりと形を変えてゆく雲だったりとかを、美しい。と思うのだ

いいや、それは嘘だ

私はそんなふうに思えない

全ての事が嫌になり
この世の中を羨み、妬んだ

まだ五ヶ月の我が子を残してこの世を去らなければならないのだ

こんなに辛い事があるのか?
あっていいのか?

私はまだ死にたくない、我が子を残して死ぬわけにはいかない


闘病生活はなんとも苦しいものだった
何より愛息子と一緒にいられない事

癌細胞が脳の運動神経にあたってて右半身が動かない
放射線治療で小さくしてリハビリをすれば 戻りこそはしないが車椅子生活までにはなる、と
だが放射線が脳へのダメージになり言語障害や記憶障害を起こすのだ

嫌だ、一片だって息子の事を忘れたくはない
もうこの手で抱っこしてあげられないのか
何もかもが当たり前だとおもっていた。夫と出会い、子供を産み、母になることが
どれだけの奇跡で、愛おしいことだったのか
普通の暮らしとは、なんと幸せなものだったのか

戻りたい

自分の生活の中に

戻りたい

一人で眠るベッドの広さに耐えられない

暑い、狭いと文句を言いながらひっついて眠った夫のそばに帰りたい


冬が始まる頃、私は自分の親を忘れた

病気の自分を見舞いにきてくれる人、そんな感じだった

夫は日によって思い出せた、息子の事は、普段は思い出せない

病室に連れてきてくれ、姿を見るとわかる。

まだ、わかる


寒さが厳しくなってきた

ま、院内はいつでも適温なんだが

訪ね来る人がそう言うのだ

そういえば最近、可愛らしい小さな男の子が来てくれる
先ほど聞くと八ヶ月だと言っていた
可愛いな、明日も来てくれるかな?



今日は気分がいい

なんだか体が暖かい




私を囲んで泣く声がする

どれも懐かしい声だ


どれくらいぶりか、自然と薄く目が開いた


泣き声の中、男性に抱かれた小さな男の子だけが満面の笑みでこちらを見ている


まぁま


そう言うのだ

まぁま

笑顔がたまらなく、可愛い


そして私は男の子の名を呼んでいた

その子はキャッキャと声をあげ笑う

そこで私の記憶は終わった


20歳と9ヶ月、私は未練の中この世を去った









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