沖神小説
テノール声に魅せられてA

「えっ…」
沖田は自分で言っときながらかなりびっくりしていた。
それは思っていた反応とは少し、いや、かなり違っていたから。
もっと、こう、おもいっきり、盛大に、反発されるだろうと思っていたのに、目の前の少女の顔は今までに見たことがないくらいに赤くなっていたから。
「好き…なのか?」
「っ!!のぼせたからあがるネ!!」
ばっと勢い良く立ち上がった神楽だったが外の気温が寒すぎていっきにお湯の中へと体制をもどした。沖田と嫌に近い距離のままで。
ちらっと沖田の顔を見る。クスッと笑っているのが見えた。
「ソウゴは、…私のこと好き…アルか?」
いつになく真剣な表情をみせる神楽に沖田も真剣な顔つきになる。
「そりゃぁ、まぁ。」
沖田は答えた。神楽は満足そうに微笑んでいた。
「お前さんはどうなんでぃ?」
神楽は沖田の目を左手で優しく抑え、右手を肩にのせてそっと口付けをした。
「これが私の答えアルネ」
小生意気な笑顔を見せる神楽に、へたくそっと文句を口にして沖田が神楽の口をふさいだ。
「キスってのはな、こうやってするんでぃ」
Sな表情で笑う沖田を見て神楽も楽しそうにわらった。
「ワンッ」
崖の上に定春と銀時、新八がいた。好都合にも上からは湯気でこちらは見えない。笑い声がしたから覗き込んでいただけだった。
「銀ちゃん、私ここにいるヨ!そこから落ちたネ。今行くから待ってて欲しいアル!!」
「おー大丈夫かぁ?」
「余裕ネ!夜兎族なめんじゃないヨ♪」
ふりむいて小声で沖田に言う。
「じゃぁね!!また、万事屋へ来るヨロシ」
「おぅ」
笑って手を振り合って別れた。


「お?なんだお前ずぶ濡れじゃねぇか」
「この下温泉だったネ」
「まじ!?凄くね?それ凄くね?」
「行きましょうよ銀さん!」
「ダメアルよ!!私が寒くて凍えてしまうネ!!早く帰るアル」
「そぉだな。温泉はまたの機会に…」

雪もやみ足元の溶け出した雪がシャリシャリと音を立てる中、三人と一匹の影は段々遠くなっていく。
果たして神楽は風邪を引かなかったのか否か…それはまた別のお話で…。



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