沖神小説
オレンジ色のシャワー

オレンジ色のシャワー

「銀ちゃん銀ちゃん、酒池肉林ってなんネ?」
「ぶっ!!」
口に含んでいたカルピスの原液を盛大にふきだした
「神楽ちゃん!!どこでそんな言葉覚えてきたの?今すぐに頭の中の消しゴムで消しちゃいなさい!もう…銀さんマジ泣きしちゃうよ!?」
「悪い言葉アルか?」
「いや、ね。銀さん的には全然OKでむしろ好きなくらい…じゃなくて!!今のも忘れて!そんなふしだらな娘に育たないで!!銀さんマジ泣きしちゃうよ!?」
「男は皆好きアルか?」
「銀さん的には・・・じゃなくて!!!もう神楽ちゃんお外で子供らしく遊んでらっしゃい!」
「でも…」
「ほらお小遣いあげるから!!」
「マジ!?酢昆布買いに行ってくるアル!!いってきま〜す♪」

ルンルン上機嫌の神楽は言葉の意味を聞くことも、定春を連れて行くことも忘れて家を飛び出していった。


「「おばちゃん、この酢昆布(あめ玉)ちょうだい」」

神楽と誰かの声が重なった。
「「ん?」」
「あっ…おぅ!久しぶりじゃねえかチャイナ」
「ソウゴ♪」
神楽の声の調子が少しあがった。
「なにしてるアルか?仕事は?」
「あぁ今日は午前中だけなんでさぁ。…チャイナ今から暇ならそこの公園に行かねぇか?ちょうどあやめの花が咲いたころできっと見頃でさぁ」
「梅雨の時期に花見か…いいアルね!お菓子たくさん買っていくアル♪」
「そうしやしょ」
沖田は神楽の歩調に合わせてゆっくりと歩きだす。普段の沖田からは考えられないほど優しい瞳で神楽の横顔を愛おしそうにみつめる。それに気づいた神楽も照れながらも沖田の瞳に釘付けになっていた。二人のゆっくりとした優しい時間。幸せの絶頂。永遠に続くことを信じて疑わない純粋な瞳は誰がみても美しいと感じただろう。
この甘い時間が刹那るものであることを沖田は知っていた。


「わぁ!いっぱい咲いてるネ!!」
花壇一面に咲き誇っている花たち。二週間程しか美しくは咲けないことを知らないからかあやめたちは凛と輝かしく咲いていた。
「自分の死期を知っていたら、こんなにも美しくは咲けないんだろうな。」
ふと沖田が呟いた。
「なぜアルか?」
口に出しまっていたことに焦る沖田
「…きっと、もうすぐ終わる命に絶望を覚えて生きる希望をわすれちまうからさぁ」
「そんなことないネ!!私なら、残りの人生を今までよりもっと楽しく生きるために努力するネ!」
「チャイナ…」


この時沖田はもう自分の病気のことを知っていた。
この事を知るのは近藤と土方のみだった。

「もし、もし俺が死んだら…お前さんは泣いてくれるのか?」
「あたりまえアル!!きっと悲しくて生きていけないネ」
「それはこまりまさぁ…お前さんには生きて欲しい」
「なに真剣な顔をしているネ?例え話でしょ?」
ふふっとわらう神楽をみて沖田は寂しそうな笑みをうかべた。

長くてあと1年半…沖田は神楽に悟られないように気をつけ、ここから八ヶ月が過ぎる。



雪が降りしきる二月の初め沖田の病状は悪化する一方で、神楽とは一ヶ月も会っていなっかた。
「仕事が忙しいから」
と嘘をついて…。


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