沖神小説
枝垂れ桜の散る様に (四

ポッポー・・・ポッポー・・

「・・・10時ですね、そろそろ帰ります」

「あぁ・・・いや、そこ座れ。」

「はい?」

銀時が、眠っている神楽を起こさないように静かに新八に指示を促した

「・・・どうしたんですか?」

「神楽の話だ」

「・・・はい。」

神楽の異常なまでの衰弱ぶりに、少なからず新八は不信感を抱いていた
だが、聞くな。の一点張りのオーラを醸し出している銀時に尋ねることはできずにいた


「あいつの病気は・・・」

言いかけて、もう一度神楽が眠っていることを確かめる

「筋萎縮性側索硬化症。知ってるか・・・?」

「いぇ・・・どんな病気なんですか?」

深い呼吸をして、銀時はできるだけ気だるそうに、話し始めた


「筋萎縮性側索硬化症、体中の筋力が徐々になくなっていくんだ。歩く筋肉、物を掴む筋肉、話す筋肉、そして、最後には心臓を動かす筋力が・・・なくなる。」

だんだん小さくなっていく

震える声。

初めて聞く、震える、声。


新八は、感情を抑えきれずに

ただ何も言うこともなく その場で静かにほほを濡らしていた


そしてもう一人・・・布団にもぐった小さな体が声を殺してシーツを湿らせていた。












ドンッドン
「・・・旦那ぁ?」

ガララッと万事屋の戸が開いた

「おー・・・総一朗君?」

「総悟です。これ、土産でさぁ」

すっと差し出したのは銀時行きつけの甘味所の串団子だった

「おーわりぃなぁ」

ふわっとした笑顔を見せ、あがれ。と手招きをする

「おじゃましまーす」

靴を脱いで、緊張気味の表情を見せる

「旦那ぁ、神楽は・・・?」

「あぁ、奥の部屋で眠ってる。・・・行って来いよ?」

目を合わせようとせずに、銀時は奥の部屋を指さす

指の差された方向へ、沖田は進む。

「・・・旦那ぁ、あいつ、何の病気なんですかぃ?」

「・・・・・・」

一瞬、静寂に包まれた空間。

耐えかねて、沖田は奥の部屋へと歩を進めた






「!総悟ぉ」

「なんでぃ、起きてたのかぃ?」

「今日は総悟が来てくれるから朝からちゃんと起きてたネ!」

「そうですかぃ。体の方は、」

聞きかけて、神楽の涙に言葉が止まった

「どっ・・・」

「総悟・・・、別れて欲しいアル」

「なっ!?」

「自分勝手だってわかってるアル・・・でも、でも私気付いたネ、私、銀ちゃんが好きよ・・・」


喉から発する頼りない少女の声。今さっき、会えるのを楽しみにしていたと話した姿は、もう見当たらない。

「―だから、別れてほしいアル」


沖田は言葉がみつからなかった

「冷めてしまったアル。ばいばいよ、総悟。」


つらそうな声色・・・

沖田は神楽の心境を悟っていた

そして、今この状況で神楽の未来を想像することは安易だった


自分のために言ってくれていることはわかっていても心が・・・頭では分かっていても心が言うことをきかない・・・

沖田は溢れだしそうな感情を必死にこらえて・・・そして・・・ゆっくり首を縦に振った


神楽なりに、苦しんで苦しんで苦しんで・・・出した答えなのだろう
俺は、この答えを受け入れなければならない・・・
冷めただなんて、微塵も信じなかった



二人は、静かな別れを告げた・・・



[先頭ページを開く]
[指定ページを開く]


<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。



w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]
無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ