沖神小説
7月7日、曇り

七月七日、曇り


「おなかいっぱい酢昆布が食べられますように」
「定春が健康でいられますように」
「銀ちゃんの糖尿が治りますように」
「サドと…決着がつきますように…」


「神楽ちゃぁーん?」

「なんねぇだめがねー」

「お願いごとは、短冊に書いて吊るさなきゃ。となえてるだけじゃだめなんだよ?」

めがねをくいっとあげて、いくつも願い事を言いあげている神楽に言った

「短冊?」

桃色の細い髪を揺らして首を斜めにさせた

長方形に切られた紙を神楽に手渡す

「これ。ここにね、願い事を書いて笹の葉にくくるんだよ」

「ひとつだけアルか?」

「決まってないと思うよ?」

「じゃぁ、どーんと持ってくるアル!!」

ニカーっと笑った神楽につられ、新八も柔らかい笑みをうかべた

「はいはい」


「さぁーさぁーのぉーはぁーさぁらさらぁー・・・なぁ新八?何で笹の葉アル?サラサラなら、お茶漬けでもよくないか?」

「いや、お茶漬けはちょっと・・・でも、なぜなんでしょうね?」

「知らないのか、この役立たずのだめがね」

ひとつ質問に答えられなかっただけでこの扱い。まったくこの娘には苦労が絶えん・・・とため息をつく新八だった



昼下がり、神楽はいつものように傘を持って、万事屋を後にした

駄菓子屋へよって、いつもの公園の、いつものベンチへと向かった

傘をたたみ、首を真上にやった

空はよどんでいる

「今晩は雨アルねぇー」

「いや、今夜は降らねぇらしいぜぃ」

「!?そっ、」

名を呼びかけて、とっさに口を塞いだ

「何しに来たネ、サド野郎」

「なにって、サボ、見回りでさぁ」

「・・・ふーん」

「雨が降るのは、これからでぃ。今夜には止みまさぁ」

言った直後、ザァァァ―――っと軽快な音を立て、空から雨粒が落ちてきた

「ほら、な?」

満足そうに、腹黒い笑顔を神楽に見せた

慌てて傘を広げる神楽

「ちっ少し濡れてしまったアルよ。・・・」

神楽は顔をあげて、目の前で濡れる沖田に聞いた

「冷たくないアルか?」

「冷たいに決まってるでさぁ」

返答は速攻だった

一瞬迷い、神楽は沖田を自分の笠の中へと招いた

「なんで、雨降るのわかってて笠持ってこなかったアル」

恥ずかしそうに下を向き、ゆっくりと屯所方面に歩きだす

「こうなることを期待していたから」なんて、沖田は死んでも言わないだろう


返事を返さない沖田に、違う質問をした

「なんで七夕の日はいつも雨なんだろ?」

番傘の骨を見上げ、沖田の顔に目線を移した

視線に気づき、沖田も神楽のほうをみた

ちっ近い!!沖田も神楽も一斉に首を前に戻した


それから少したって、また神楽が口をひらいた


「雨だと、おり姫とひこ星、会えないネ。寂しくないアル?」

神楽の横顔を流し眼で盗み見して、クスッと笑い沖田が答える

「会ってやすぜ。お二人さんは。」

「え?」

「星があるのは宇宙でさぁ。地上からは雨雲で見えなくても、宇宙では雨は降らない。7月7日が雨なのは、きっと会ってる所を見られるのが恥ずかしいから、でさぁ」


神楽の目が輝いた

「じゃぁ毎年、会えてたアルネ!!だから毎年、夜は曇ってるアルネ!!」

気がつくと、雨はもう小降りになっていた

だけど、この距離でいたいと二人が願ったのか、傘がたたまれることはなかった






「「願い事、叶った」アル」


ふたりの小声が重なった

「「え?」」

また、重なる


屯所の笹の葉、万事屋の笹の葉、一番上に飾られた願い事・・・



「あいつとの距離が縮まりますように・・・」




7月7日、今宵もきっと曇り。


[先頭ページを開く]
[指定ページを開く]


<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。



w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]
無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ