沖神小説
満月愛しい君を 神楽



「覚悟ぉぉ!!」
「させるかぁ!」

勢いよく振り下ろされた番傘はあっさりとよけられる
瞬きの一瞬を見逃さずもろ刃が襲いかかる

「まだまだだねぃ」

首元で剣先が動きをとめた

「156勝154敗アル」
「違いまさぁ!156勝153敗だろぃ?」
「どっちみちまだ私の勝ちアルね」

やわらかそうな口元から白い歯がこぼれる
と同時に空中に飛び上がる

「行くアル!」
「っしゃぁー!」






「あ、明後日の夜暇アルか?」
「わりぃ仕事入ってらぁ」
「そ・・・わかった」

期待の問いかけとは逆にそっけない返事が返ってきた。

「なにか用事ありやした?」
むくれる神楽を気遣うように聞き返す
「月見のお祭りネ」

あぁ、沖田が首を縦にふる
だがその日は攘夷浪士達の間で大きな取引がありどうしても予定をあけることができなかったのだ。
「悪ぃ、必ず埋め合わせはしまさぁ」

軽く拗ねてみせただけなのに意外な優しさに思わず笑みがこぼれる
「わかった!楽しみにしてるアル♪」






「わぁー!銀ちゃん月見るネ!すっごく綺麗ヨ!!」
「おー見事だぁねぇ〜」
「くっさ!!銀ちゃん酒くっさ!!!」
「おま 月見っていえば酒だろぉ?」
上機嫌にまぁるいつややかな団子をひとつ口にほおりこむ
あまぁいあんこが口にひろがり、また猪口へと口を近づける
「うぃ〜月見最高〜」
「・・・月、見てないネ」

もう一度空に首をやり、深く呼吸をしてたちあがった
「ちょっと外で見てくるアル!」

肺いっぱいに心地いい空気を取り込んで、外へでていった

「ん〜気持ちいい夜アル♪ソウゴも見てるかなぁ〜?」
グッと宙に腕をあげ降ろした髪を後ろへ戻す

ふと足が動きを止める

「血の・・匂い、アル。」


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