沖神小説
オレンジ色のシャワー(完)

沖田が他界して二週間がたった。まるで抜け殻のようになった神楽は押入れからでてこなくなっていた。たまに沖田の名前を呼ぶだけで、銀時と新八、定春に話しかけようとはしなかった。
そんな神楽を見ているのがつらい銀時達。
「可愛そうに神楽ちゃん、まだ沖田さんが亡くなったことが信じられないのでしょうね…」
泣きそうになる新八。
「そっとしといてやれ…今は、かまわないでやれ…」
「銀さん…」
すっかり食欲のなくなった神楽は痩せほそって今にも倒れそうだった。痛々しい少女の姿に銀時達はなにもすることができなかった。
「神楽…」

ピンポーーン


久しぶりに万事屋のチャイムがなった。
銀時は濡れた目をこすってわざとけだるそうに声をだした
「あーぃ」
「よぅ万事屋。チャイナ娘はいるか?」
「多串君じゃねぇか。…神楽は、だせねぇ。なんの用だ?」
「これ…。総悟からのことづかりもんだ。」
土方は一通の手紙と軍服のスカーフをだした
「俺が死んだら、わたしてくれって…。」
「…。泣くなよ多串君。」
「ないてねぇよ。じゃあなっ」
「おいっ!土方。わざわざありがとな。」
「あぁ」
銀時は雨の中傘もささずに濡れている土方の背中をみおくった。

「神楽、今土方が持ってきてくれたぞ。沖田から、おまえにって」
「!!」
神楽は沖田のスカーフをうけとり愛おしそうに抱きしめた
「ソウゴの匂いがっ…するヨ…」
ボロボロっと大粒の涙を流した。
それを見ていた銀時たちも、泣いていた。
神楽は涙をふいて手紙をあけた。


神楽は読みながら何度も何度も涙をぬぐった。そして傘も持たずに家を飛び出した。
「おいっ!神楽!?」
夕暮れ時の冷たい雨の中、心と体を濡らして走りぬけていく。

足を止めたその場所は、いつか二人で見に来たあやめの花がある公園だった。

「ソウゴ、花、もう枯れちゃってるアル…。」
雨にうたれた花が、下を向いて泣いている。
「ソウゴ、ソウゴォォ!!!」
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

沖田が死んで初めて大声をだして泣いた。



拝啓   神楽様

この手紙はできれば読んでいてほしくねぇ
でも今、お前さんはこの手紙を読んでいる。俺の居ない世界で

今日は俺が居なくなって何日目?
お前さんはまだ泣いているのかい?
もしまだ俺のために泣いてくれてるなら、もう泣きやんでくだせぇ。
俺は神楽の笑顔が好きなんでさぁ。
もう泣かないでいいから
もう悲しまなくていいから
ありがとう。

神楽、お前さんには伝えきれないほど感謝していまさぁ。
毎日会いに来てくれてありがとう。
なにかと世話やいてくれてうれしかった。
短い人生だったけど神楽のおかげで楽しかった。
お前さんに出会えて本当によかった。
ありがとう。ありがとう。

神楽、愛してる

幸せにな。
          5月24日  沖田総悟


「ソウゴ…」
あやめの花にそっと話しかけ、目をつぶり思い出を数えかえす。
切なくて、愛おしくて胸が張り裂けそうな思いの中、寂しさをこらえる。
もう逢えない恋人の影をさがしながら頬に一筋、涙が伝っておちる。

夕暮れ時のオレンジ色の空の下、降りしきる雨は神楽の涙の存在感を薄めてゆく。

夕日に照らされて雨水を輝かせるあやめの花は美しく、赤くみえた。
「ソウゴ…枯れてもあやめは綺麗だヨ……」
スカーフを握り締め、空へ話し出す
「今はまだ、笑ってこの花を見ることはできないヨ。でも、来年にはきっと、笑顔で満開のあやめ見に来るアル…!!その時は一緒に見ていてネ。ゆっくり眠ってネ。バイバイ。ソウゴ」


バイバイ、ソウゴ……。


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