Book1
特別な日を共に
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閉じた瞼の向こうに光を感じ、ゆっくりと重く瞬きした。

視界に引っ掛かる人影は、光を背負ったまま僕に近付いて来る。光が直接当たらないように遮ってくれているから、ゆっくりと覚醒していけるこの感じが心地よくて、光に透けるオレンジ色の髪を見ながら軽く目を閉じると、額に柔らかい物が落ちてきた。

僕の朝は恋人からのキスで始まる。というか、勝手に入ってきて勝手にしてくるんだけれど。

「おはようございます。猊下」

額に、頬に、首筋に下りてきて、最後に唇に下りてくる。

「……おはよう」

ヨザックと特別な関係になってから、ほぼ毎朝こんな感じだ。夜も一緒に過ごしてそのまま朝までコースもあるにはあるけれど、そうでない日も、用事で血盟城を空けている時以外は、かかさずこうして起こしに来る。

「……猊下、今日はこのまま寝ていて下さい」

唐突に言われて、起こしかけていた身体の動きを止めた。

「え……?」

「少し発熱しているようです」

「……」

毎朝のこれは、どうやら検温も兼ねていたらしい。そして確かに、言われてみれば、少し身体が重いような気がする。まぁ、あるとしても微熱だと思うんだけど。

でも、そんな事を言った所で聞き入れてくれないだろうな。諦めて嘆息し、再び身体の力を抜くと、大きな手がふわりと髪を撫でてきた。

「そんな顔しないで下さい。こうでもしないと、アンタは休んでくれないでしょ?」

「それは……」

……まぁ、否定しない。僕の恋人は、優秀な専属看護師でもあるようだ。

「それに、坊っちゃんが言ってたんですよ、
今日は猊下の特別な日だって。だから、特別な日の貴方を俺だけが独占したいな〜って」

「…………」

何を言い出すかと思えば……。

確かに、昨日こっちに来る時に六月五日だった訳だから、一晩明けた今日は僕の誕生日と言える。特別な日と言われれば特別な日だ。

でも、ヨザックが僕を独占って……。それは、逆じゃないのか?

思わず小さく吹き出して、僕はおもむろに口を開いた。

「じゃあ、お言葉に甘えて、今日は君に、僕を独占してもらおうかな」

そう言うと、ヨザックは嬉しそうに顔を輝かせて、優しく「はい」と答えてくれた。

END
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